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機械量子物語

PROJECT 4

ARTIFICIAL ADVISORY

機械がつくった量子コンピュータの物語

森 旭彦    AKIHICO MORI

サイエンスライター

一般社団法人量子技術による新産業創出協議会(Q-STAR)

 

協力:日立総合計画研究所

現実と区別がつかない「生成された未来」

WIREDなど国内外のメディアでサイエンスとテクノロジーに関連したテーマを執筆するサイエンスライターの森 旭彦さんは「マガジン『BASH Magazine』は近い未来に僕たちが目にする事件を形にしたもの」と話します。
 「10年としないうちに、すべてがAIによって生成された情報を、それと知らずに手に取る日が来るのではないでしょうか? もしそれが量子コンピュータや自然科学の大発見など、人類の未来を大きく変化させるものだったら、僕たちはどう受け止めるのでしょう?」。
 量子芸術祭で展示される『BASH Magazine』は、文書を生成するAI「ChatGPT」、画像を生成するAI「Midjourney」などの生成AIをフル活用し、本格的な量子コンピュータが実現する2040年の社会が、まるで本物の取材記事のように描かれています。しかも写真と文章のすべてがほぼ無編集(文章のカットや表記統一、誤字訂正などは除く)でつくられています。
 森さんは、サイエンスライターとしてのジャーナリズムにおける経歴で培った知識を活用しながらこの作品をつくっていったそうです。
 「例えば、このマガジンには、現実の社会で起きている批判が再現されています。実業家イーロン・マスクによるスタートアップ『ニューラリンク』による動物実験が世界中で批判されていますが、この批判の性質(のようなもの)をChatGPTに学習させ、記事を生成しています」と言います。
 その記事は実際のニューラリンクの批判とは異なっていながら、現実の批判と近似した内容を描いています。「今はまだまだ時間と手間がかかりますが、数年もしないうちに改善されるでしょう」。
 他の記事には、科学の現場で実際の研究者が活用している手法やプロンプト(生成AIに出す指示のこと)を利用して生成されたものもあります。「生成AIの活用が進んでいるのは科学の現場でも同じです。とくに人類の知性の中枢である学術論文に、どのように生成AIが関わるかはずっと議論されています。つまり、このマガジンで再現されていることは、ただの絵空事ではなく、いま目の前で進行している問題なのです」。

露骨な生成表現で人間に警告する

プロジェクトの名称は「アーティフィシャル・アドバイザリー 人工的な勧告―露骨な内容」、音楽のカルチャーからインスピレーションを受けたと言います。
 「ラップやパンクロックなど、露骨な批判的表現が目立つ音楽には、『ペアレンタル・アドバイザリー 親への勧告―露骨な内容』というラベルが貼られています。これを生成AIでやってみたかったのです。つまり、露骨なAI生成表現をあえて社会に提示することで、その可能性や課題を探求するということです」。
 今回はQ-STAR(一般社団法人量子技術による新産業創出協議会)の協力のもと『BASH Magazine』を活用したワークショップも行い、実際に量子技術を開発している研究者が生成AIに対してどのように感じているかのアンケートを実施。結果は量子芸術祭でも展示されました。
 「ジャーナリズムでも、アートでもできないことをやりたかったんです。それがきっと、これからの僕たちの未来には必要なものだから」(森)。

機械量子物語(寄り)

PROJECT 4 PROFILE

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森 旭彦(Akihico Mori/もり・あきひこ)

サイエンスライター

サイエンスと人間性の相互作用や衝突に関する社会評論をWIRED 日本版などに寄稿。ロンドン芸術大学大学院 にてメディアコミュニケーション(修士)を学ぶ。大学院在学中に BBCのジャーナリストらを取材したプロ ジェクト『COVID-19 インフォデミックにおけるサイエンスジャーナリズム、その課題と進化』が国内外のメディアで取り上げられる。

一般社団法人量子技術による新産業創出協議会(Q-STAR)

量子技術の発展と将来の社会実装に向け2021年に任意団体として設立。その後、さらに公益性を高め産業界のオピニオンリーダーとしてグローバルに貢献できる協議会へ発展するため、2022年に一般社団法人化。メーカーから金融までのさまざまな国内企業を中心に、量子技術のベンチャー企業、大学を はじめとする研究機関など、87の団体で構成される(2023年11月現在)。

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